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2007年「記念講演 ほんとの出会いを求めて」および卒業式

 7月5日、第27回出版技術講座を締めくくる第10回目、今井書店グループ会長の永井伸和氏を迎えて記念講演が行われた。永井氏は「本の学校」の設立者。講演では「ほんとの出会いを求めて―地域の学び舎づくりの夢」をテーマに、これまで粘り強く取り組まれてきた活動を語られた。地方から教育や読書への推進運動をしていくことがいかに厳しいものかがわかり、中央に一極集中している出版制度のあり方について改めて考えさせられるものであった。

 講演の中で、永井氏が強調された点を中心に要旨をまとめる。

 「本の学校」は、昨今活字離れが進む現状の中で、今井書店グループ120周年を記念して1995年に設立された。構想自体は、今井書店3代目社長の今井兼文氏の代から長年検討されてきたが実現には至らず、1987年「本の国体」といわれた「ブックインとっとり’87日本の出版文化展」を源として「本の学校」の構想は本格化した。ドイツの産業教育をモデルとし、郁文塾という私塾で、「本の学校」準備会に集う著者から読者に至る多くの人々が集まり、地域の製紙、印刷、製本工場の協力を得ながら、若手出版人の育成講座が行われている。1995年から1999年の5年間、21世紀の出版ビジョンを地域から描いた「本の学校」大山緑陰シンポジウムの参加者は延べ二千人を越え、なかでも若い世代が中心となって、その後も自主的な勉強会が催され、運営を盛り立てているという。
 ドイツの書籍業学校は、画一的な日本の教育制度と異なり、ギルドマイスターに代表される過去何百年の産業教育の歴史があり、デュアルシステムと呼ばれる、企業と職業訓練学校による約380業種にも及ぶ職業教育二重システム(実技・理論)が構築されていて、より実践的な制度が充実している。
 書店人だけではなく、出版社や取次の人々も共に、出版文化の継承が一元的に構築されているという。そのため流通においても、日本のように実務・実利に一辺倒ではなく、出版文化に対する意識が高いドイツでは合理的に行われている。再販制のもとに、書店・取次・版元を結ぶ横断的な流通システムが形成されており、前日の夕方に受けた注文の本を翌日には届けることが可能なのだという。取次を中心とするインフラ設備ならば日本にも存在するが、このような柔軟な対応は日本では未だ不可能な状況にある。


 日本の出版文化は東京に一極集中しており、東京発・地方行きのタテ構造の仕組みに永井氏自身疑問を感じているという。注文してから2~3週間も掛かる発注システムはその典型といえ、中央と地方の情報の格差に不安を抱かざるを得ない。格差を是正するためにも、ネットワーク参加型のヨコ構造の横断的なシステムの構築を目指していくことが望ましいのである。
 また、出版売上高に占める公共図書館の購入額の割合は、欧米に比べて日本は桁違いに乏しく、後世に残せる本を増やすためにも図書館の普及を進める必要がある。ところが、地方ではその認識が充分とはいえず、昭和50年代まで鳥取県では県立図書館でカバーし市町村の公共図書館が存在しなかったのだという。意欲的な活動の甲斐もあって、国民文化祭や日本PTA全国研究大会において、公共図書館、学校図書館や読書推進運動をテーマにした催しが取り上げられて理解は深まってきたものの、依然として継続的にアピールする姿勢は続けていかなければならないのだという。

 昨今の相次ぐ書店の閉店の流れは、書店のみならず出版社や取次ぎの中でも危機感を強めている傾向が高まっている。7月7日に行われる「本の学校 出版産業シンポジウム2007 in東京」では、様々な方面で出版産業を盛り上げようとする活動が報告される。局地的には成果を上げている活動もあるが、書店・取次・出版社、垣根を問わず一丸となって現状に立ち向かう必要性を感じずにはいられない。都心で活動している者にとっても、地方の現状は他人事ではなく、これから進むであろう地方分権には積極的に関わっていく必要があるだろう。永井氏の指摘されるように、地域の再生を行う上で教育や出版産業の関係性は欠かせない。話の規模は大きいが、個人個人のできる範囲で積極的に関わっていくことの継続が肝要であることを学んだ。


 講演の後、全10回に亘って行われた出版技術講座の卒業式が行われた。式では出版技術講座理事長の津田清氏(出版労連中央執行委員長)から、受講者に向けてお祝いの言葉を頂き、皆勤で参加された受講者には修了書が直接手渡された。卒業式に引き続き交流会が開かれた。
 受講者同士、顔を覚えてきた時期だっただけに、これで講義が終わってしまうのは惜しまれる思いもあるが、無事に最後まで講義を終了することができたことは大変喜ばしい。各分野の第一線で活躍される講師陣のお話からは、学ぶべき点が非常に多く、改めて感謝の気持ちをこの場で示したい。
 なお、交流会の二次会は永井さんをまじえて、受講生、運営委員会メンバーが参加して楽しい時を過ごすことができた。 (報告:運営委員会事務局)

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